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3~4ヶ月ぶりに、アルファズルに関係の無い短編を書いたんだけど、前半は書き込むのに後半が淡白と言うか雑になってゆく癖がでてしまった……。
が、今回はこれが「演出」として押し通せそうなので、このままいきます。
悪癖がこうなることもあるんだなあ。
が、今回はこれが「演出」として押し通せそうなので、このままいきます。
悪癖がこうなることもあるんだなあ。
2026年1月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
『灰になるまで君を呼ぶ』01/21~01/31
#語彙トレ2026、1ヶ月続きました。
前回→581
続き→606
01/21-凝結
エンリケと別れて隊長室へ向かう。
『どうした、ディックス?』
相変わらずパーティションの向こうから話しかけてくる養父に、皇女にばれずに説明をするにはどうしたものかと思案する。
「凝結を超えて氷になった国からの、手回しだ」
LINKS式のアグレイシアの表現をして、遠回しの説明をする。皇女の護衛騎士が、宰相の放った手下の自作自演を潰して欲しいと願ったことだと。
『成程』
影がゆらゆら揺れる。
『恐らくその裏切り者は、暴走する獣の国にも通じているだろう』
マルディアスに在る、三大国家の最後のひとつを聞いた時、ディックスの視界はぐらりと傾いだ。
01/22-諧謔
『実に諧謔に満ちた筋書きではないか?』
炎が燃え盛る街だった。顔の見えない誰かが笑っている。自分は背の高い誰かの腕の中で震えている。この炎をもたらしたのが、自分だけではないことはわかっていた。
『引き裂かれた姉弟! やがて戦い合う運命! ○○○○○の潜在能力を引き出すのにうってつけの舞台装置ではないか!』
何か聞き取れない単語があった。顔の見えない誰かの手を、赤銀髪の少女が握っている。赤い瞳はぼんやりと曇り、どこを見ているのかわからない。
『おねえちゃん』
手を伸ばしても届かず、振り向かず、ふたりは炎の向こうに消えた。
01/23-寂寥
あの後何年かして、腕の主に連れられて、惨劇の街を見に戻った気がする。街は再興されること無く、灰が降り積もって、沈黙と寂寥感に包まれていた。
『お前の役目は重いものだが』
手を繋ぐ相手が言った。
『必ずこのマルディアスを救う鍵になる。そのために、強くなれ。LINKSとして、ヴァーンの子孫として』
見上げると、逆光で顔の見えない、黒髪を整髪料でなでつけた、背の高い男性に見つめられていた。
(……あれ?)
ふと疑問が走る。
(ギルって、どんな顔してたっけ)
途端に。頭の天辺から爪先まで、激痛が走った。
01/24-軋む
身体が痛い。全身の骨が軋むように悲鳴をあげている。
「ディー、ク?」
拙い呼びかけが、現実を離れていた意識の襟首を掴む。炎に溺れていたかのごとき感覚が、冷えてゆく。ぜえぜえと喘鳴しながら顔を上げれば。
(ティナ?)
一瞬幼馴染に見えた顔が、紫髪の女性に変わる。蒼の瞳が心配そうにこちらを覗き込んでいる。
『ディックス? 大丈夫か?』
曇り硝子の向こうの養父の声も聞こえる。
「……大丈夫」
ふたりに返し、片手で顔を覆って深い息をつく。
自分は誰かを忘れている。大事な何かを見落としている。まるで、機械の歯車が合わなくて軋んだ音を立てるかのように。
01/25-覚醒
意識が覚醒してくる。現実をはっきりと認識する。
「とりあえず、暴走する獣の国に潜れってことだな」
『お前は察しが良くて助かるよ』
ギルガメッシュが微かに笑う気配がする。呼吸にしては機械的ではあるが。
「その間、このお姫様はどうしようか」
安全を期すなら、同僚であるエンリケあたりに託すのが無難だ。しかし。
「レティ、ディークと、いく。ひとりは、いや」
レイティスは、ぎゅっとこちらの袖をつかんでくる。その姿は、実の父に実験体としか見られていなかった幼馴染の孤独を思い出させる。
「……わかったよ」
途端に、皇女がぱっと笑顔の花を咲かせた。
01/26-輪郭
間接照明が灯る仄暗い部屋に、二人の人物の輪郭が浮かび上がる。一人は本革張りのチェアに深々と腰かけて葉巻をふかし、もう一人はひざまずいて頭を垂れている。
「よく知らせてくれた」
煙と一緒に、笑いを含んだ声が吐き出される。
「LINKSに喧嘩を吹っ掛ける体の良い理由ができた。ギルガメッシュは本当に目障りだからな」
もう一度、深々と葉巻をふかして、でっぷりとした体躯が揺れる。
「ディックス・フリーダンを追え。国内は儂が押さえる」
「かしこまりました」
間接照明に、金髪が照らし出される。
「すべては父上の望むままに」
01/27-邂逅
灰の海だった。
明らかに普通の炎で焼かれたのではない、『なにか』が地面を切り裂き焦がした跡。容赦無く絶たれた命の群れ。
『暴走する獣の国』ジュメールに向かったディックス達の前に現れた町は、惨劇の跡だった。
レイティスが怯えたように腰にしがみつく力を強くする。ディックス自身も、頭の奥がちりちりする。
生き残りを探すだけ無駄だろう。バイクを走り出させようとした時。
「み、みんなの仇い!」
幼い声と、銃声ひとつ。
弾はあらぬ方向に飛んでいったが、皇女が喉の奥で悲鳴をあげる。
咄嗟に銃を抜く。目が合う。
少年との邂逅だった。
01/28-羨望
「お前」銃を下ろし、少年に問いかける。「この町の生き残りか」
「おまえたちがやったくせに!」
向けられる銃口は震えている。持ち方もなっていない。たとえまた引鉄を引いたところで、こちらに当たる確率は一パーセントにも満たないだろう。
「俺達は南……アサル=アリムから来た。この破壊の跡は北から来ている。この意味がわかるか、ガキ?」
少年がはっと目を瞠った。成程、愚かではないようだ。
「おまえについていけば、母ちゃんたちの仇を取れる?」
ディックスの強さにすがるように。羨望を覚えたかのように、緑の瞳が見つめてくる。
いつか自分もこの目をした。復讐の、目を。
01/29-席捲
かつてファルメア帝国がマルディアス大陸の支配者として席捲していた頃、『鋼鉄の獣』という機械兵器が続々と開発された。鋼の皮膚と石油の血液を持つそれらはしかし、神の領域に手を出したひとへの天罰か、悉くが暴走し、それが帝国の斜陽を招いたとされている。
獣達はLINKS――帝国最終防衛機構が多大な犠牲を払って殲滅したはずだ。
だが、この町の惨劇の起き方は、まるで。
「なあ、なあ、兄ちゃん!」
いつの間にか銃をしまって目の前まで来ていた少年の声が、ディックスを現実に呼び戻した。
「兄ちゃん、ジュメールに行くんだろ? おれも行きたい!」
01/30-炯炯
半眼で、少年を見下ろす。
「ガキ、俺達は遊びに行くんじゃねーんだ。これだけ簡単に命を奪う相手の懐へ飛び込むんだぞ」
「それでもだよ!」
炯炯とした瞳で、少年は食いついてくる。
「ディーク」
レイティスが、袖を引いた。
「この子を独りで残していくのは可哀想。独りは、哀しい」
まるで正気に戻ったかのように流暢に語る皇女に驚く。その目はまたすぐにとろんと幼稚に曇ったが。
がりがり頭をかく。これ以上お荷物を抱えるのは正直気が進まないが、孤児をここに残して死なれたら、寝覚めが悪い。
「ガキ」溜息をひとつ。「名前」
少年はぱっと表情を輝かせた。
「マオ!」
01/31-終焉
冷たい風が吹く山麓にある工廠の奥で、科学者達が慌ただしく走り回り、タブレットに指を滑らせている。
「先日の出力は三十パーセント。それでも十分な火力でした」
眼鏡の研究者の報告を背に、長身の壮年の女は、べっとり紅を塗った口を笑みに持ち上げる。
「まだまだですよ」
女はねっとりとした声音で、背後の研究者に言いつける。
「アサル=アリムとアグレイシアを制して、我がジュメールが唯一の王者となるには、百パーセント引き出すのです」
古の魔獣のような『鋼鉄の獣』は、今は無数のケーブルに繋がれ、静かにたたずんでいる。
「『終焉の獣』、アヌナークの力を」畳む
#アルファズル戦記
#灰になるまで君を呼ぶ
#語彙トレ2026、1ヶ月続きました。
前回→581
続き→606
01/21-凝結
エンリケと別れて隊長室へ向かう。
『どうした、ディックス?』
相変わらずパーティションの向こうから話しかけてくる養父に、皇女にばれずに説明をするにはどうしたものかと思案する。
「凝結を超えて氷になった国からの、手回しだ」
LINKS式のアグレイシアの表現をして、遠回しの説明をする。皇女の護衛騎士が、宰相の放った手下の自作自演を潰して欲しいと願ったことだと。
『成程』
影がゆらゆら揺れる。
『恐らくその裏切り者は、暴走する獣の国にも通じているだろう』
マルディアスに在る、三大国家の最後のひとつを聞いた時、ディックスの視界はぐらりと傾いだ。
01/22-諧謔
『実に諧謔に満ちた筋書きではないか?』
炎が燃え盛る街だった。顔の見えない誰かが笑っている。自分は背の高い誰かの腕の中で震えている。この炎をもたらしたのが、自分だけではないことはわかっていた。
『引き裂かれた姉弟! やがて戦い合う運命! ○○○○○の潜在能力を引き出すのにうってつけの舞台装置ではないか!』
何か聞き取れない単語があった。顔の見えない誰かの手を、赤銀髪の少女が握っている。赤い瞳はぼんやりと曇り、どこを見ているのかわからない。
『おねえちゃん』
手を伸ばしても届かず、振り向かず、ふたりは炎の向こうに消えた。
01/23-寂寥
あの後何年かして、腕の主に連れられて、惨劇の街を見に戻った気がする。街は再興されること無く、灰が降り積もって、沈黙と寂寥感に包まれていた。
『お前の役目は重いものだが』
手を繋ぐ相手が言った。
『必ずこのマルディアスを救う鍵になる。そのために、強くなれ。LINKSとして、ヴァーンの子孫として』
見上げると、逆光で顔の見えない、黒髪を整髪料でなでつけた、背の高い男性に見つめられていた。
(……あれ?)
ふと疑問が走る。
(ギルって、どんな顔してたっけ)
途端に。頭の天辺から爪先まで、激痛が走った。
01/24-軋む
身体が痛い。全身の骨が軋むように悲鳴をあげている。
「ディー、ク?」
拙い呼びかけが、現実を離れていた意識の襟首を掴む。炎に溺れていたかのごとき感覚が、冷えてゆく。ぜえぜえと喘鳴しながら顔を上げれば。
(ティナ?)
一瞬幼馴染に見えた顔が、紫髪の女性に変わる。蒼の瞳が心配そうにこちらを覗き込んでいる。
『ディックス? 大丈夫か?』
曇り硝子の向こうの養父の声も聞こえる。
「……大丈夫」
ふたりに返し、片手で顔を覆って深い息をつく。
自分は誰かを忘れている。大事な何かを見落としている。まるで、機械の歯車が合わなくて軋んだ音を立てるかのように。
01/25-覚醒
意識が覚醒してくる。現実をはっきりと認識する。
「とりあえず、暴走する獣の国に潜れってことだな」
『お前は察しが良くて助かるよ』
ギルガメッシュが微かに笑う気配がする。呼吸にしては機械的ではあるが。
「その間、このお姫様はどうしようか」
安全を期すなら、同僚であるエンリケあたりに託すのが無難だ。しかし。
「レティ、ディークと、いく。ひとりは、いや」
レイティスは、ぎゅっとこちらの袖をつかんでくる。その姿は、実の父に実験体としか見られていなかった幼馴染の孤独を思い出させる。
「……わかったよ」
途端に、皇女がぱっと笑顔の花を咲かせた。
01/26-輪郭
間接照明が灯る仄暗い部屋に、二人の人物の輪郭が浮かび上がる。一人は本革張りのチェアに深々と腰かけて葉巻をふかし、もう一人はひざまずいて頭を垂れている。
「よく知らせてくれた」
煙と一緒に、笑いを含んだ声が吐き出される。
「LINKSに喧嘩を吹っ掛ける体の良い理由ができた。ギルガメッシュは本当に目障りだからな」
もう一度、深々と葉巻をふかして、でっぷりとした体躯が揺れる。
「ディックス・フリーダンを追え。国内は儂が押さえる」
「かしこまりました」
間接照明に、金髪が照らし出される。
「すべては父上の望むままに」
01/27-邂逅
灰の海だった。
明らかに普通の炎で焼かれたのではない、『なにか』が地面を切り裂き焦がした跡。容赦無く絶たれた命の群れ。
『暴走する獣の国』ジュメールに向かったディックス達の前に現れた町は、惨劇の跡だった。
レイティスが怯えたように腰にしがみつく力を強くする。ディックス自身も、頭の奥がちりちりする。
生き残りを探すだけ無駄だろう。バイクを走り出させようとした時。
「み、みんなの仇い!」
幼い声と、銃声ひとつ。
弾はあらぬ方向に飛んでいったが、皇女が喉の奥で悲鳴をあげる。
咄嗟に銃を抜く。目が合う。
少年との邂逅だった。
01/28-羨望
「お前」銃を下ろし、少年に問いかける。「この町の生き残りか」
「おまえたちがやったくせに!」
向けられる銃口は震えている。持ち方もなっていない。たとえまた引鉄を引いたところで、こちらに当たる確率は一パーセントにも満たないだろう。
「俺達は南……アサル=アリムから来た。この破壊の跡は北から来ている。この意味がわかるか、ガキ?」
少年がはっと目を瞠った。成程、愚かではないようだ。
「おまえについていけば、母ちゃんたちの仇を取れる?」
ディックスの強さにすがるように。羨望を覚えたかのように、緑の瞳が見つめてくる。
いつか自分もこの目をした。復讐の、目を。
01/29-席捲
かつてファルメア帝国がマルディアス大陸の支配者として席捲していた頃、『鋼鉄の獣』という機械兵器が続々と開発された。鋼の皮膚と石油の血液を持つそれらはしかし、神の領域に手を出したひとへの天罰か、悉くが暴走し、それが帝国の斜陽を招いたとされている。
獣達はLINKS――帝国最終防衛機構が多大な犠牲を払って殲滅したはずだ。
だが、この町の惨劇の起き方は、まるで。
「なあ、なあ、兄ちゃん!」
いつの間にか銃をしまって目の前まで来ていた少年の声が、ディックスを現実に呼び戻した。
「兄ちゃん、ジュメールに行くんだろ? おれも行きたい!」
01/30-炯炯
半眼で、少年を見下ろす。
「ガキ、俺達は遊びに行くんじゃねーんだ。これだけ簡単に命を奪う相手の懐へ飛び込むんだぞ」
「それでもだよ!」
炯炯とした瞳で、少年は食いついてくる。
「ディーク」
レイティスが、袖を引いた。
「この子を独りで残していくのは可哀想。独りは、哀しい」
まるで正気に戻ったかのように流暢に語る皇女に驚く。その目はまたすぐにとろんと幼稚に曇ったが。
がりがり頭をかく。これ以上お荷物を抱えるのは正直気が進まないが、孤児をここに残して死なれたら、寝覚めが悪い。
「ガキ」溜息をひとつ。「名前」
少年はぱっと表情を輝かせた。
「マオ!」
01/31-終焉
冷たい風が吹く山麓にある工廠の奥で、科学者達が慌ただしく走り回り、タブレットに指を滑らせている。
「先日の出力は三十パーセント。それでも十分な火力でした」
眼鏡の研究者の報告を背に、長身の壮年の女は、べっとり紅を塗った口を笑みに持ち上げる。
「まだまだですよ」
女はねっとりとした声音で、背後の研究者に言いつける。
「アサル=アリムとアグレイシアを制して、我がジュメールが唯一の王者となるには、百パーセント引き出すのです」
古の魔獣のような『鋼鉄の獣』は、今は無数のケーブルに繋がれ、静かにたたずんでいる。
「『終焉の獣』、アヌナークの力を」畳む
#アルファズル戦記
#灰になるまで君を呼ぶ
ひっさびさに数日間こねこねして、背景のある絵を描きました。
『雪が解けて春になる』下巻範囲より。
ファイル名が『鬼王を討つ』だったことから伝われこのニュアンス!!(本文とは色々齟齬があるのですが)

ゼファーにマンガパース使ってヒオウには使わなかったので、遠近法狂ってますねこれ?
これが今の私の精一杯!!畳む
#アルファズル戦記
#雪が解けて春になる
『雪が解けて春になる』下巻範囲より。
ファイル名が『鬼王を討つ』だったことから伝われこのニュアンス!!(本文とは色々齟齬があるのですが)

ゼファーにマンガパース使ってヒオウには使わなかったので、遠近法狂ってますねこれ?
これが今の私の精一杯!!畳む
#アルファズル戦記
#雪が解けて春になる
一月半ぶりのアクセサリ教室で、ひとつほぼ完成しました。
先生のフォローが無いとまだまだ自力で調整できないので、回数を重ねたいです。

バイカラーアゲートと真鍮のチャーム。買った時点で雪春のゼファーとヒオウをイメージしていたので、たぶん買ったのは去年の7月以降なんだけど、はっきりしない……。
霧の空から飛び降りてくるゼファーをヒオウが見上げてるようなかんじになったな……。畳む
先生のフォローが無いとまだまだ自力で調整できないので、回数を重ねたいです。

バイカラーアゲートと真鍮のチャーム。買った時点で雪春のゼファーとヒオウをイメージしていたので、たぶん買ったのは去年の7月以降なんだけど、はっきりしない……。
霧の空から飛び降りてくるゼファーをヒオウが見上げてるようなかんじになったな……。畳む
やっ と!!
告知できるところまで来ました。
くるみ舎こはく文庫様より、2/13に新作が出ます!
今回も本当に沢山のかたがたにご尽力いただき、配信の運びとなりました。
今、なんだか気が抜けたらしく、上手く言語化ができないのですが、TLを三作書いてきて、色々と学ばせていただいています。
どんなになっても、自分は創作を手離してはいけないな……と思い知るここ最近です。
告知できるところまで来ました。
くるみ舎こはく文庫様より、2/13に新作が出ます!
今回も本当に沢山のかたがたにご尽力いただき、配信の運びとなりました。
今、なんだか気が抜けたらしく、上手く言語化ができないのですが、TLを三作書いてきて、色々と学ばせていただいています。
どんなになっても、自分は創作を手離してはいけないな……と思い知るここ最近です。
『灰になるまで君を呼ぶ』01/11~01/20
#語彙トレ2026 2回目のまとめです。
前回→574
続き→591
SFファンタジー(?)、まだ導入部分です。まだ1月の中旬なので、焦る時ではない。
01/11-噤む
ターミナル・ゼロの車両通路を駆け抜けて、終点で降りる。
「ほら」
レイティスに手を貸してバイクから降ろし、ヘルメットを脱がす。皇女はぼんやりとしてされるがままに任せていた。
隊長室に向かう。白く曇ったパーティションの向こうから、壮年の男声が聞こえる。
『おかえり、ディックス。その子はどうした?』
「ギル、実は」
養父に、今回の戦闘報告をする。
『そうか、シグマ達は』
ギルガメッシュは悼むように呟くと、レイティスに声をかける。
『それで、皇女様は何故護衛以外と共に?』
途端に、レイティスは怯えた表情で口を噤み、ディックスの腕にすがりついた。
01/12-揺曳
曇り硝子のパーティションの向こうで、養父の影がゆらゆら揺れている。彼が考えごとをしている時は、こう揺曳するのだ。
『アグレイシアにとって、融和路線として通っていた彼女が生きていると不都合な派閥があるのは明白だ。だが、アサル=アリムが皇女を保護したと主張しても、皇国は、誘拐だなんだと難癖をつけて、戦闘は泥沼化するだろう』
伊達に二十年の付き合いではない。ギルガメッシュが次に放つ言葉もわかっている。
『ディックス。お前が皇女の保護者になれ。そして探すのだ。ティナが言った通り、この戦争の淵源を。真の黒幕が誰なのかを』
01/13-乖離
面倒な役目を押し付けられた。がりがりと頭をかく。
だが、大統領府とLINKSの方針は乖離して久しいのだ。敵国の皇女を確保したとあのタヌキと腰巾着どもが知れば、この哀れな皇女の辿る道など、想像に易い。
「わーかった。わかりましたよ、ギル」
降参とばかりに両手を挙げて、隊長の提案を受け入れる。
「そうと決まったら、あんたを匿う場所を確保しないとな。その、いかにもアグレイシアですって服も着替えないと」
「きがえる? ……ぬぐ?」
振り返ると、皇女はきょとんと目を瞠り、襟元に手をかけた。
「今すぐにじゃない!!」
01/14-隠微
「この、愚か者が!」
ぱん、と乾いた音が、金属の壁で反響する。
「皇女の死体を回収できなかっただと!? それが我々にとって、どれだけ不利になるか、わかっているのか、ティナ・シュミット!?」
張られて赤くなった頬に触れもせず、痛みの表情を隠微にすら見せず、ティナはただ目を伏せる。
「前所長の実子だからと買っていたが、やはり裏切り者の娘はその程度か!」
アグレイシア宰相ブリームは唾を飛ばしながら、壁際に寄りかかる青年にも怒りの矛先を向ける。
「ジークハルト・リオ・クライスラー、貴様も呑気にしているな!」
感情のうかがえない氷色の瞳が、宰相に向けられた。
01/15-残滓
「とにかく、仕切り直しだ! 皇王に盛る薬も、もっと強くせねばな……」
ブツブツと陰謀を呟きながら、宰相は『異能力者研究所』の研究室を出てゆく。
「すまない」
怒りの残滓が消える頃、青年がティナに声をかけた。
「俺の計画に君を巻き込んで、矢面に立たせてしまって」
「いいえ」
ふるふると首を横に振る。皇女は奇跡的にディックスに託せた。あの幼馴染ならば、彼女を守ってくれるだろう。
「大丈夫か?」
「え?」
ジークハルトが口元を指差すので、己のそこを拭う。手の甲に赤が移る。
「手当てを」
「いえ、大丈夫です」
再度首を振った。
「本当に、痛くないので」
01/16-氷解
ばしゃばしゃと。水で顔を洗う。常人ならば冷たいと怯む水温も、ティナにはなんら痛痒ではない。
鏡の中で、凍りついた水滴が顔についている自分が、こちらを見つめている。また一段と凍結の能力が強まったようだ。
炎を操る幼馴染ならば、この粒もたちどころに氷解してくれるだろう。それどころか、本気を出したらこの身を燃やし尽くすかもしれない。
(いっそ、灰にしてくれたら)
麻酔無しで身体にメスが入る度に、悲鳴をあげていた。だが、それも次第に慣れてゆき、気がつけば、父は氷像になっていた。
自分はアグレイシアでも異端だ。どこにも行き場は無いのだ。
01/17-蠱惑
『我々アグレイシアは今、困難の渦中におります』
顔をタオルで拭きながら洗面所から戻ってくると、ラジオから、艶を帯びた声が流れている。
『アサル=アリムは謂われなく我が国に攻撃を加え、戦端を開きました。非はかの国にあるのです』
「病床にある」皇王の代わりに演説を行う『皇女レイティス』は語る。
『皆さん、今こそ皇家の旗の元に団結する時です。力を合わせて、この国難を乗りきりましょう』
蠱惑的に仕組まれた偽皇女の演説放送は続く。ブリームの仕掛けは、今までは、奴の思惑通りに運んでいた。
(でも)
奴の企みを崩すのはもはや、自分とジークハルトだけではないのだ。
01/18-伏流
「着替えたか?」「うん」
レイティスの返事を待って、自室に入る。アサル=アリム標準の服に着替えた彼女を皇女と気づく者は、そうそういないだろう。上手く伏流できたと思う。
薄汚れたアグレイシアの衣装をどう処分したものかと手に取る。と、その懐からぱさりと一通の封筒が落ちた。
拾い上げて封を解く。出てきた手紙を読み進めるうちに、幼馴染が戦の淵源を探せと言った意味を理解した。
「ジークハルト・リオ・クライスラー、か」
「ジーク?」
途端にレイティスが期待に満ちた表情をする。
「来てくれる?」
そんな彼女に真実を告げるのは、あまりにも酷で。
01/19-脆弱
ディックスは皇女の護衛騎士からの手紙を、皇女の服と一緒にクローゼットの奥へ放り込んだ。上手い処分の方法は思いつかなかった。下手に誰かの目につけば、大統領に報告が行く。
あのタヌキは金の力で地位を買った商人だ。政治力など無きに等しい。他者を蹴落とす為に謀略を巡らせることだけは得意だが。
ファルメア帝国の頃の結束力を失い、もはや戦闘力としてしか動けないLINKSの権威は脆弱だ。足元をすくわれればすぐさま解体されるだろう。
「ギルに相談するしかねーか」
顎に手をやってぼやけば、皇女は小首を傾げてこちらを見つめていた。
01/20-焦躁
「よ」
養父の元に向かう途中、軽い調子で声をかけられてディックスは振り返った。金髪の人好きしそうな青年が右手を掲げて歩み寄ってくる。同僚のエンリケだ。
「そっちが噂のお姫様か」
ギルガメッシュから話は聞いたらしい。自分が話題になっていると気づいたレイティスは、警戒心一杯でこちらの背中に隠れた。
エンリケは眉を垂れて肩をすくめたが、声を低めて真剣な表情で耳打ちする。
「アグレイシア側は相当焦燥に駆られてるぜ。皇女が見つかったって吹聴して、毎日皇王に代わって徹底抗戦の演説放送さ」
皇女の騎士からの手紙を思い出す。仕組んでいるのは、宰相とやらだろう。畳む
#アルファズル戦記
#灰になるまで君を呼ぶ
#語彙トレ2026 2回目のまとめです。
前回→574
続き→591
SFファンタジー(?)、まだ導入部分です。まだ1月の中旬なので、焦る時ではない。
01/11-噤む
ターミナル・ゼロの車両通路を駆け抜けて、終点で降りる。
「ほら」
レイティスに手を貸してバイクから降ろし、ヘルメットを脱がす。皇女はぼんやりとしてされるがままに任せていた。
隊長室に向かう。白く曇ったパーティションの向こうから、壮年の男声が聞こえる。
『おかえり、ディックス。その子はどうした?』
「ギル、実は」
養父に、今回の戦闘報告をする。
『そうか、シグマ達は』
ギルガメッシュは悼むように呟くと、レイティスに声をかける。
『それで、皇女様は何故護衛以外と共に?』
途端に、レイティスは怯えた表情で口を噤み、ディックスの腕にすがりついた。
01/12-揺曳
曇り硝子のパーティションの向こうで、養父の影がゆらゆら揺れている。彼が考えごとをしている時は、こう揺曳するのだ。
『アグレイシアにとって、融和路線として通っていた彼女が生きていると不都合な派閥があるのは明白だ。だが、アサル=アリムが皇女を保護したと主張しても、皇国は、誘拐だなんだと難癖をつけて、戦闘は泥沼化するだろう』
伊達に二十年の付き合いではない。ギルガメッシュが次に放つ言葉もわかっている。
『ディックス。お前が皇女の保護者になれ。そして探すのだ。ティナが言った通り、この戦争の淵源を。真の黒幕が誰なのかを』
01/13-乖離
面倒な役目を押し付けられた。がりがりと頭をかく。
だが、大統領府とLINKSの方針は乖離して久しいのだ。敵国の皇女を確保したとあのタヌキと腰巾着どもが知れば、この哀れな皇女の辿る道など、想像に易い。
「わーかった。わかりましたよ、ギル」
降参とばかりに両手を挙げて、隊長の提案を受け入れる。
「そうと決まったら、あんたを匿う場所を確保しないとな。その、いかにもアグレイシアですって服も着替えないと」
「きがえる? ……ぬぐ?」
振り返ると、皇女はきょとんと目を瞠り、襟元に手をかけた。
「今すぐにじゃない!!」
01/14-隠微
「この、愚か者が!」
ぱん、と乾いた音が、金属の壁で反響する。
「皇女の死体を回収できなかっただと!? それが我々にとって、どれだけ不利になるか、わかっているのか、ティナ・シュミット!?」
張られて赤くなった頬に触れもせず、痛みの表情を隠微にすら見せず、ティナはただ目を伏せる。
「前所長の実子だからと買っていたが、やはり裏切り者の娘はその程度か!」
アグレイシア宰相ブリームは唾を飛ばしながら、壁際に寄りかかる青年にも怒りの矛先を向ける。
「ジークハルト・リオ・クライスラー、貴様も呑気にしているな!」
感情のうかがえない氷色の瞳が、宰相に向けられた。
01/15-残滓
「とにかく、仕切り直しだ! 皇王に盛る薬も、もっと強くせねばな……」
ブツブツと陰謀を呟きながら、宰相は『異能力者研究所』の研究室を出てゆく。
「すまない」
怒りの残滓が消える頃、青年がティナに声をかけた。
「俺の計画に君を巻き込んで、矢面に立たせてしまって」
「いいえ」
ふるふると首を横に振る。皇女は奇跡的にディックスに託せた。あの幼馴染ならば、彼女を守ってくれるだろう。
「大丈夫か?」
「え?」
ジークハルトが口元を指差すので、己のそこを拭う。手の甲に赤が移る。
「手当てを」
「いえ、大丈夫です」
再度首を振った。
「本当に、痛くないので」
01/16-氷解
ばしゃばしゃと。水で顔を洗う。常人ならば冷たいと怯む水温も、ティナにはなんら痛痒ではない。
鏡の中で、凍りついた水滴が顔についている自分が、こちらを見つめている。また一段と凍結の能力が強まったようだ。
炎を操る幼馴染ならば、この粒もたちどころに氷解してくれるだろう。それどころか、本気を出したらこの身を燃やし尽くすかもしれない。
(いっそ、灰にしてくれたら)
麻酔無しで身体にメスが入る度に、悲鳴をあげていた。だが、それも次第に慣れてゆき、気がつけば、父は氷像になっていた。
自分はアグレイシアでも異端だ。どこにも行き場は無いのだ。
01/17-蠱惑
『我々アグレイシアは今、困難の渦中におります』
顔をタオルで拭きながら洗面所から戻ってくると、ラジオから、艶を帯びた声が流れている。
『アサル=アリムは謂われなく我が国に攻撃を加え、戦端を開きました。非はかの国にあるのです』
「病床にある」皇王の代わりに演説を行う『皇女レイティス』は語る。
『皆さん、今こそ皇家の旗の元に団結する時です。力を合わせて、この国難を乗りきりましょう』
蠱惑的に仕組まれた偽皇女の演説放送は続く。ブリームの仕掛けは、今までは、奴の思惑通りに運んでいた。
(でも)
奴の企みを崩すのはもはや、自分とジークハルトだけではないのだ。
01/18-伏流
「着替えたか?」「うん」
レイティスの返事を待って、自室に入る。アサル=アリム標準の服に着替えた彼女を皇女と気づく者は、そうそういないだろう。上手く伏流できたと思う。
薄汚れたアグレイシアの衣装をどう処分したものかと手に取る。と、その懐からぱさりと一通の封筒が落ちた。
拾い上げて封を解く。出てきた手紙を読み進めるうちに、幼馴染が戦の淵源を探せと言った意味を理解した。
「ジークハルト・リオ・クライスラー、か」
「ジーク?」
途端にレイティスが期待に満ちた表情をする。
「来てくれる?」
そんな彼女に真実を告げるのは、あまりにも酷で。
01/19-脆弱
ディックスは皇女の護衛騎士からの手紙を、皇女の服と一緒にクローゼットの奥へ放り込んだ。上手い処分の方法は思いつかなかった。下手に誰かの目につけば、大統領に報告が行く。
あのタヌキは金の力で地位を買った商人だ。政治力など無きに等しい。他者を蹴落とす為に謀略を巡らせることだけは得意だが。
ファルメア帝国の頃の結束力を失い、もはや戦闘力としてしか動けないLINKSの権威は脆弱だ。足元をすくわれればすぐさま解体されるだろう。
「ギルに相談するしかねーか」
顎に手をやってぼやけば、皇女は小首を傾げてこちらを見つめていた。
01/20-焦躁
「よ」
養父の元に向かう途中、軽い調子で声をかけられてディックスは振り返った。金髪の人好きしそうな青年が右手を掲げて歩み寄ってくる。同僚のエンリケだ。
「そっちが噂のお姫様か」
ギルガメッシュから話は聞いたらしい。自分が話題になっていると気づいたレイティスは、警戒心一杯でこちらの背中に隠れた。
エンリケは眉を垂れて肩をすくめたが、声を低めて真剣な表情で耳打ちする。
「アグレイシア側は相当焦燥に駆られてるぜ。皇女が見つかったって吹聴して、毎日皇王に代わって徹底抗戦の演説放送さ」
皇女の騎士からの手紙を思い出す。仕組んでいるのは、宰相とやらだろう。畳む
#アルファズル戦記
#灰になるまで君を呼ぶ
これは二次創作を通ってきたのと、ひとつの作品に執着する時間が長めだったからかもしれないけど、自分の作品の登場人物を、「うちのこ」「キャラ」と言うことにあまり抵抗感が無い、というか、無い。
なんなら「オリキャラ」とさえ呼んでしまう。
たぶん、まだ自信が無い頃に世界観を作ったから、「一次創作であること」にプライドを持ちたかったのかもしれない。
私のファンタジー作品はJRPGが基盤になっていて、ナーロッパ調であることが多く、重たいので、あまり読まれない、評価が返ってきづらい、カジュアルに感想がもらえない、というコンプレックスは常にあって、それが内に向かったせいで、「うちのこ」という執着が強くなったのかな~などと考えている。
付き合う時間が長いほど設定が生えて、番外編が生まれやすいのは、アルテアとかアルファズルで証明してるし、単巻完結くらいの話だと、キャラとちょっと距離があるかもしれない。「登場人物」と言うかな~?
広義の『アルファズル戦記』の登場人物は、ちゃんとした場(登場人物紹介とか)では「登場人物」だけど、カジュアルに話す時はやっぱり「キャラ」だよな……。その方が、思い入れが変わってくる気がします。
思い入れが過ぎて、ifとかR18とかを、自己満足の習作で書いているのは、時々漏れます。
なんなら「オリキャラ」とさえ呼んでしまう。
たぶん、まだ自信が無い頃に世界観を作ったから、「一次創作であること」にプライドを持ちたかったのかもしれない。
私のファンタジー作品はJRPGが基盤になっていて、ナーロッパ調であることが多く、重たいので、あまり読まれない、評価が返ってきづらい、カジュアルに感想がもらえない、というコンプレックスは常にあって、それが内に向かったせいで、「うちのこ」という執着が強くなったのかな~などと考えている。
付き合う時間が長いほど設定が生えて、番外編が生まれやすいのは、アルテアとかアルファズルで証明してるし、単巻完結くらいの話だと、キャラとちょっと距離があるかもしれない。「登場人物」と言うかな~?
広義の『アルファズル戦記』の登場人物は、ちゃんとした場(登場人物紹介とか)では「登場人物」だけど、カジュアルに話す時はやっぱり「キャラ」だよな……。その方が、思い入れが変わってくる気がします。
思い入れが過ぎて、ifとかR18とかを、自己満足の習作で書いているのは、時々漏れます。
もじのイチに行ってきました。
開場直前のトオノさんのアナウンスで、突然の最終回宣言に開場がドヨッとなりました。
ここの日記を遡るとおわかりの通り、ここんとこかなりベッコベコだったので、参加を胃が痛くなるくらい迷ったんですが、お隣さんとお話が盛り上がり、巡回当番もペアのかたとお話沢山して、本もアクセも想定より旅立ち、ガチャも2等が当たって、元気を沢山いただきました。
私は在宅勤務しかできないと思ってたけど、逆だ。外に出ないと塞ぎ込む!!
今、とんでもない選択を迫られて吐きそうな日々を送ってますが、昨日も友人がうちまで来てくれたし、自分は独りで潰れなくていいんだ、こんなに見ててくれる人がいるんだ、とわかりました。
また明日にはメショってるだろうけど、終わらない夜は無いって、自分でよく書いてるんだから、自分がそれを信じないとな、と思いました。
開場直前のトオノさんのアナウンスで、突然の最終回宣言に開場がドヨッとなりました。
ここの日記を遡るとおわかりの通り、ここんとこかなりベッコベコだったので、参加を胃が痛くなるくらい迷ったんですが、お隣さんとお話が盛り上がり、巡回当番もペアのかたとお話沢山して、本もアクセも想定より旅立ち、ガチャも2等が当たって、元気を沢山いただきました。
私は在宅勤務しかできないと思ってたけど、逆だ。外に出ないと塞ぎ込む!!
今、とんでもない選択を迫られて吐きそうな日々を送ってますが、昨日も友人がうちまで来てくれたし、自分は独りで潰れなくていいんだ、こんなに見ててくれる人がいるんだ、とわかりました。
また明日にはメショってるだろうけど、終わらない夜は無いって、自分でよく書いてるんだから、自分がそれを信じないとな、と思いました。
『灰になるまで君を呼ぶ』01/01~01/10
#語彙トレ2026 というブルスカでのタグに乗っかって、文章練習に書き始めました、広義の『アルファズル戦記』南の大陸編を。
何の準備も無く、人名地名設定もほとんど忘れて久しいので、行き当たりばったりでいきます。エターナる可能性も、途中で心折れる可能性も、そもそも365日より早く終わる可能性もあります。
およそ10日毎に、このてがろぐにまとめてゆきます。本文は畳みます。
01/01-端緒
銃声ひとつ。
敵兵が額から血を噴いてあおむけに倒れるのを、壁の陰から確認して、走り出す。途端に銃撃の雨が降り注いだが、鍛えられたしなやかな筋肉で躍動するように全てをかわす。
アサル=アリム共和国とアグレイシア皇国の戦が始まった端緒は、皇国の皇女レイティスが、友好の使徒としてアサル=アリムを訪問中に行方不明になったことだった。
元々両国の関係は芳しくなく、理由さえあればいつでも開戦できたのだ。
「ったく、お偉方はよ」
愚痴りながら弾を込め直し、更に敵兵を撃ち倒した。
01/02-凍てつく
「ディックス!」
敵兵が全て倒れたところで、僚兵が手を振る。
「エース様はよくやるぜ」
「茶化すなよ」
彼らは『LINKS』の隊員である。かつてこのマルディアス大陸が、ファルメアというひとつの帝国だった頃、皇家の懐刀として、戦闘、諜報、暗殺などを請け負った特殊部隊の名だ。それが今も、アサル=アリム大統領の配下として機能している。
「さて、次の戦場は……っと」
彼がタブレットを持ち出して操作する。が。
「……え?」
怯えた声を聞いて、ディックスは赤い目を向け、驚きで瞠る。
仲間の手が凍っている。ぴきぴきと音を立てて、あっという間に彼は氷の彫像と化した。
01/03-熾火
ディックスはすぐさま銃を構え直して辺りを見渡す。自身の体内で常に燃えている、己の熾火を呼び起こし、油断無く敵の気配を探る。
ぴしり、と。指先に冷たさが走る。だが、彼の生来持つ『能力』が、あっという間に冷気を溶かした。
途端に殺気が迫る。氷結でディックスを仕留められないと悟った敵が、即座に白兵戦に切り替えたのだろう。肩までの茶髪を翻した、アグレイシア兵服の女が、ナイフ片手に迫ってくる。銃の迎撃も全てかわし、人並外れた跳躍をして襲いかかってくる。
ディックスもすぐさまナイフを取り出して、刃を受け止める。そして、僚兵が凍りついた時以上の驚きにとらわれた。
01/04-軋轢
『おとうさんが、ギルにはついていけないって言うの』
自分の育ての親であるLINKS隊長と、彼女の父親である研究所長の間に生じた軋轢は、もはや修復不可能になっているのは、子供の目から見てもわかった。養父にくってかかる所長の目は、血走っていて怖かった。
『「ぼうめい」するって言ってる』
『お前もついていくのか?』
訊ねれば、少女は黒い瞳を憂いに細めて、
『おとうさん、ひとりになっちゃうから』
と膝を抱え直した。
その面影がある。
「ティナ?」
少女の名前をつぶやく。女性兵は瞠目し、
「……ディックス?」
ぽろりと、こぼれ落ちるようにこちらの名を呼んだ。
01/05-淵源
「どうして、お前がアグレイシアに」
つばぜり合いをしながら、我ながら抜けた問いかけをしていると思う。所長は『亡命』したのだ。その先で研究を諦めるとは思わない。
『ひとの持つ可能性を最大限に引き出す』
という研究を。
そしてそのメスが、実の娘に向かない理由が無い。彼女は幼い頃から、炎を帯びる自分とは逆に、あらゆるものを凍てつかせる能力を発現していたのだから。
「……ディックス」
記憶より落ち着いた声で、少女は語りかける。
「この戦争の淵源を追って。レイティス様を、守って」
それだけを残して、彼女は飛び退り、あっという間に物陰に姿を消した。
01/06-雅趣
気づけば周囲は静まり返っていた。敵兵は全滅し、自分以外のLINKS隊員は、幼馴染の能力によって凍りついただろう。まだ冷気が漂っている。
研究所長の、現実を見ているのかわからないぎょろついた目が脳裏に蘇る。奴は実の娘まで兵器に仕立て上げたのか。
「……下衆い」
つぶやいて、足元の小石を蹴る。ころころ転がったそれは、半端な位置で跳ね返され、「あっ」と高い声が聞こえた。
咄嗟に銃を構え直す。石の返ったところでステルス布がずり落ちる。雅趣めいた服装に身を包んだ、紫髪に蒼い瞳の女性が、おののきに唇を震わせていた。
01/07-綻び
女性の纏う衣装は、アグレイシア織布を使った、皇族や貴族のものだ。しかしそれは薄汚れ、綻びが見える。
更にディックスが眉をひそめたのは、女性が手枷をかけられていたことだ。ステルス布まで使って、ここの敵兵は、彼女を護送する途中だったのか。
ひとつの可能性に至る。女性の前に膝をつき、問いかける。
「あんた、レイティス皇女か」
質問に、女性の肩がびくりと震える。それが答えだ。
「安心しろ、オレはあんたに危害を加えない」
「きがい……あぶないこと、しない?」
大人じみた顔立ちとは裏腹に、子供のような口調で問いかけてくる皇女に、力強く頷き返した。
01/08-仄見える
銃をひと撃ちして手枷を外し、「立てるか」と手を握る。皇女はおずおずと頷きながら、引かれるままに身を起こした。
「あんた、何でこんなところにいるんだ。こいつらは護衛兵じゃないのか?」
「ちがう、しらない。ごえい……は、ジーク」
「そのジークってのは?」
問いかけても、ふるふると首を横に振るばかりで、まともな事情は引き出せそうに無い。
「ジーク、いない。レティ、ひとりぼっち」
しくしくと。迷子のようにしゃくりあげる皇女は、まるで子供返りだ。恐らく、幼児退行するほどの「何か」があったのだろうことくらいは、仄見えた。
01/09-浸食
アサル=アリムの首都ヴァルファレスは、高山が長年の激しい風雨に浸食された台地の上に聳えている。かつて天から降りてきた始祖種ヴァーンの機械技術により、あたりの天候を常春に変えて、ひとの住める場所にしたのだ。
舗装された道路にバイクを走らせる。二人で乗ることを想定していなかったので、ヘルメットはひとつしか無い。当然、レイティスに被せた。ここで彼女が転がり落ちて頭を打ちでもしたら、それこそ大問題だ。
ディックスを庇護者と認識したのか、彼女はぎゅっとこちらの腰に腕を回してしがみついている。
バイクは坂を登って、都市の中枢ターミナル・ゼロへと向かった。
01/10-境界線
ターミナル・ゼロには境界線が引かれている。一般人は決して入ることができない。LINKSのメンバーと、研究員、そして隊長のギル――ギルガメッシュが許可した者だけだ。
固く閉ざされた金属の扉前でバイクを停め、コンソールを叩き、呼びかける。
「No.1349、ディックス・フリーダン。要救助者を一人保護した。同行の許可を」
数秒の機械思考が走った後、音声が流れる。
『隊長の許可を得ました。お進みください』
扉が両側に開く。肩越しに振り返ると、レイティスはぽかんと口を開けてその様子を見上げている。
(本当に子供さながらだな)
溜息をつき、再びエンジンをふかした。畳む
ひとまず導入まで。
世界観とか、人物まとめとかは、もう少し進んだ頃に改めて語りますが、お察しの通り、他の大陸より機械文明が進んでいます。まあ西の話で多少垣間見えたんですが……。
文章練習のためにがんばりまする。
続き→581
#アルファズル戦記
#灰になるまで君を呼ぶ
#語彙トレ2026 というブルスカでのタグに乗っかって、文章練習に書き始めました、広義の『アルファズル戦記』南の大陸編を。
何の準備も無く、人名地名設定もほとんど忘れて久しいので、行き当たりばったりでいきます。エターナる可能性も、途中で心折れる可能性も、そもそも365日より早く終わる可能性もあります。
およそ10日毎に、このてがろぐにまとめてゆきます。本文は畳みます。
01/01-端緒
銃声ひとつ。
敵兵が額から血を噴いてあおむけに倒れるのを、壁の陰から確認して、走り出す。途端に銃撃の雨が降り注いだが、鍛えられたしなやかな筋肉で躍動するように全てをかわす。
アサル=アリム共和国とアグレイシア皇国の戦が始まった端緒は、皇国の皇女レイティスが、友好の使徒としてアサル=アリムを訪問中に行方不明になったことだった。
元々両国の関係は芳しくなく、理由さえあればいつでも開戦できたのだ。
「ったく、お偉方はよ」
愚痴りながら弾を込め直し、更に敵兵を撃ち倒した。
01/02-凍てつく
「ディックス!」
敵兵が全て倒れたところで、僚兵が手を振る。
「エース様はよくやるぜ」
「茶化すなよ」
彼らは『LINKS』の隊員である。かつてこのマルディアス大陸が、ファルメアというひとつの帝国だった頃、皇家の懐刀として、戦闘、諜報、暗殺などを請け負った特殊部隊の名だ。それが今も、アサル=アリム大統領の配下として機能している。
「さて、次の戦場は……っと」
彼がタブレットを持ち出して操作する。が。
「……え?」
怯えた声を聞いて、ディックスは赤い目を向け、驚きで瞠る。
仲間の手が凍っている。ぴきぴきと音を立てて、あっという間に彼は氷の彫像と化した。
01/03-熾火
ディックスはすぐさま銃を構え直して辺りを見渡す。自身の体内で常に燃えている、己の熾火を呼び起こし、油断無く敵の気配を探る。
ぴしり、と。指先に冷たさが走る。だが、彼の生来持つ『能力』が、あっという間に冷気を溶かした。
途端に殺気が迫る。氷結でディックスを仕留められないと悟った敵が、即座に白兵戦に切り替えたのだろう。肩までの茶髪を翻した、アグレイシア兵服の女が、ナイフ片手に迫ってくる。銃の迎撃も全てかわし、人並外れた跳躍をして襲いかかってくる。
ディックスもすぐさまナイフを取り出して、刃を受け止める。そして、僚兵が凍りついた時以上の驚きにとらわれた。
01/04-軋轢
『おとうさんが、ギルにはついていけないって言うの』
自分の育ての親であるLINKS隊長と、彼女の父親である研究所長の間に生じた軋轢は、もはや修復不可能になっているのは、子供の目から見てもわかった。養父にくってかかる所長の目は、血走っていて怖かった。
『「ぼうめい」するって言ってる』
『お前もついていくのか?』
訊ねれば、少女は黒い瞳を憂いに細めて、
『おとうさん、ひとりになっちゃうから』
と膝を抱え直した。
その面影がある。
「ティナ?」
少女の名前をつぶやく。女性兵は瞠目し、
「……ディックス?」
ぽろりと、こぼれ落ちるようにこちらの名を呼んだ。
01/05-淵源
「どうして、お前がアグレイシアに」
つばぜり合いをしながら、我ながら抜けた問いかけをしていると思う。所長は『亡命』したのだ。その先で研究を諦めるとは思わない。
『ひとの持つ可能性を最大限に引き出す』
という研究を。
そしてそのメスが、実の娘に向かない理由が無い。彼女は幼い頃から、炎を帯びる自分とは逆に、あらゆるものを凍てつかせる能力を発現していたのだから。
「……ディックス」
記憶より落ち着いた声で、少女は語りかける。
「この戦争の淵源を追って。レイティス様を、守って」
それだけを残して、彼女は飛び退り、あっという間に物陰に姿を消した。
01/06-雅趣
気づけば周囲は静まり返っていた。敵兵は全滅し、自分以外のLINKS隊員は、幼馴染の能力によって凍りついただろう。まだ冷気が漂っている。
研究所長の、現実を見ているのかわからないぎょろついた目が脳裏に蘇る。奴は実の娘まで兵器に仕立て上げたのか。
「……下衆い」
つぶやいて、足元の小石を蹴る。ころころ転がったそれは、半端な位置で跳ね返され、「あっ」と高い声が聞こえた。
咄嗟に銃を構え直す。石の返ったところでステルス布がずり落ちる。雅趣めいた服装に身を包んだ、紫髪に蒼い瞳の女性が、おののきに唇を震わせていた。
01/07-綻び
女性の纏う衣装は、アグレイシア織布を使った、皇族や貴族のものだ。しかしそれは薄汚れ、綻びが見える。
更にディックスが眉をひそめたのは、女性が手枷をかけられていたことだ。ステルス布まで使って、ここの敵兵は、彼女を護送する途中だったのか。
ひとつの可能性に至る。女性の前に膝をつき、問いかける。
「あんた、レイティス皇女か」
質問に、女性の肩がびくりと震える。それが答えだ。
「安心しろ、オレはあんたに危害を加えない」
「きがい……あぶないこと、しない?」
大人じみた顔立ちとは裏腹に、子供のような口調で問いかけてくる皇女に、力強く頷き返した。
01/08-仄見える
銃をひと撃ちして手枷を外し、「立てるか」と手を握る。皇女はおずおずと頷きながら、引かれるままに身を起こした。
「あんた、何でこんなところにいるんだ。こいつらは護衛兵じゃないのか?」
「ちがう、しらない。ごえい……は、ジーク」
「そのジークってのは?」
問いかけても、ふるふると首を横に振るばかりで、まともな事情は引き出せそうに無い。
「ジーク、いない。レティ、ひとりぼっち」
しくしくと。迷子のようにしゃくりあげる皇女は、まるで子供返りだ。恐らく、幼児退行するほどの「何か」があったのだろうことくらいは、仄見えた。
01/09-浸食
アサル=アリムの首都ヴァルファレスは、高山が長年の激しい風雨に浸食された台地の上に聳えている。かつて天から降りてきた始祖種ヴァーンの機械技術により、あたりの天候を常春に変えて、ひとの住める場所にしたのだ。
舗装された道路にバイクを走らせる。二人で乗ることを想定していなかったので、ヘルメットはひとつしか無い。当然、レイティスに被せた。ここで彼女が転がり落ちて頭を打ちでもしたら、それこそ大問題だ。
ディックスを庇護者と認識したのか、彼女はぎゅっとこちらの腰に腕を回してしがみついている。
バイクは坂を登って、都市の中枢ターミナル・ゼロへと向かった。
01/10-境界線
ターミナル・ゼロには境界線が引かれている。一般人は決して入ることができない。LINKSのメンバーと、研究員、そして隊長のギル――ギルガメッシュが許可した者だけだ。
固く閉ざされた金属の扉前でバイクを停め、コンソールを叩き、呼びかける。
「No.1349、ディックス・フリーダン。要救助者を一人保護した。同行の許可を」
数秒の機械思考が走った後、音声が流れる。
『隊長の許可を得ました。お進みください』
扉が両側に開く。肩越しに振り返ると、レイティスはぽかんと口を開けてその様子を見上げている。
(本当に子供さながらだな)
溜息をつき、再びエンジンをふかした。畳む
ひとまず導入まで。
世界観とか、人物まとめとかは、もう少し進んだ頃に改めて語りますが、お察しの通り、他の大陸より機械文明が進んでいます。まあ西の話で多少垣間見えたんですが……。
文章練習のためにがんばりまする。
続き→581
#アルファズル戦記
#灰になるまで君を呼ぶ
#語彙トレ2026 まとめました。主人公ピンチ。
前回→591
02/01-潜伏
マオを加えて三人になった一行は、サイドカー付きの中古車に乗り換え、戦争から逃げてきたきょうだいを装ってジュメールの国境街に入った。
上手く潜伏できたと思う。のだが、どうにも身体が重い。マオを拾った町を出てから五日。自分の悪い勘が当たるなら、潜伏期間を経た頃だろう。
「マオ」
だらだらと汗を流しながら少年の名を呼び、硬貨の入った革袋を放る。
「目立たない裏通りの宿で二部屋取れ。で、闇医者を探せ。間違ってもまっとうな医者を呼ぶなよ」
そこまで言ったところで、ディックスの意識は沈み込む。
「ディーク!?」
レイティスの声が遠くに聞こえた。
02/02-呻吟
浅い呼吸の合間に呻吟が混じる。氷嚢を載せても、高熱の前にあっという間に溶ける。
「こりゃ、アタシにもどうしようもないね」
お手上げ、とばかりに闇医者の女は両肩をすくめた。
「あんたら、同じ場所から来たんだろ? 伝染病にしても、なんでこのぼうやだけ発症して、あんたらがピンピンしてるのか、わからない」
「ディーク、しぬの?」
レイティスが涙目で闇医者を見つめる。女は溜息をつき、首を横に振る。
「ビザーリム研究所まで行けばあるいは。だけど、あんな気のおかしい連中の吹き溜まりにあんたらをやれないよ」
レイティスの表情が、絶望的になった。
02/03-狡猾
「レティ、間違っても兄ちゃんを救うためにビザーリムに一人で行くとかすんなよ」
マオはディックスにつきっきりの子供返り皇女に声をかける。どこの国にも属さない町で育ったマオにとっては、どこの国も敵だ。だけどディックスは、LINKSであることを隠さずに、レイティスがアグレイシアの皇女であることも話してくれた。自分を一人の男として見込んでくれたのだ。……と前向きな解釈をする。
「レティは兄ちゃんを看てろよ」
マオの言葉に、皇女はゆるゆる頷く。それを見て部屋を出る。
我ながら、こういうのは『狡猾』と言うのだったか。
「命賭けてみたいじゃん、男ならさ」
02/04-残照
マオは宿を出て裏通りを走る。
ビザーリム研究所というのがどこかはわからない。酒場に行っても、「ガキはおうちでミルクでも飲んでな」と叩き出されるだろう。
行くあても無いまま、山脈に落ちる残照をぼんやりと眺めていると、ひゅうっと冷たい風が吹いた気がして、顔を上げる。そしてぎょっとした。
いつの間にか、茶髪に黒瞳の女性がマオを見下ろしていた。気配など無かった。驚きで心臓がすくみあがる。
「あなた」女が口を開く。「ディックスを助けに行くつもり?」
何故知っているのか。警戒心を満たして睨みつけると、女はゆるゆると首を横に振った。
02/05-微睡む
青年にもたれかかったまま、微睡みに落ちたレイティスは夢を見た。
氷色の瞳を持つ男が、自分を見つめている。
『どうか今は、堪え忍んでください』
両手を握り締める手はひんやりとしている。
『ブリームの企みから貴女を逃すには、これしか無い』
貴方も一緒にと言っても、彼の決意が覆ることは無い。
『貴女は外からの援助を。私は内から奴を崩します』
そして彼は背を向けて去ってゆく。行かないでと手を伸ばしても届かない。
「ジーク!」
叫びながらばっと顔を上げる。
そうだ。何故忘れていたのだろう。こんなに大事なことを。
涙が頬を伝った。
02/06-遡及
「その言い分は認められません」
「しかしながら、皇女殿下」
凛と背を伸ばして睨み付けても、宰相は飄々と肩をすくめた。
「『皇王が政務に就けない場合、宰相にその権限を譲渡する』、これは陛下が倒れられた半年前まで遡及して有効です」
半年以上前からお前が仕込んでいたのだろうが。殴りかかりたい拳を握り締め、怒りを飲み込む。
「ならば、わたくしはやはりアサル=アリムに赴き、父上を治す術を探し、同時に、ジュメールに対抗する同盟を結んでまいりましょう」
ブリームがあからさまに嫌そうな顔をする。自分の背後で護衛騎士が痛快に唇を持ち上げる気配がわかった。
02/07-深淵
結局ジークハルトを皇都に置いたまま、少数の護衛を伴って国を出た。それをブリームが見逃すはずが無かった。
アサル=アリムの街道をゆく途中で、馬車が賊に襲われ、御者を斬り捨てられた暴れ馬は土手を落ちて、河に放り出された。
深淵に沈みゆく中、護衛騎士の名をあぶくで繰り返しながら、意識を失い、すべてを仕組んだ宰相の手の者に引き上げられた時には、理性も失っていた。
護送の途中で、LINKSと戦闘になっていなかったら、自分は人知れず消されて遺体が国に帰っていただろう。
だが、自分は生きているのだ。
「ディーク」
苦しそうな青年に呼びかける。
「ありがとう」
02/08-禁忌
ティナ・シュミットと、女性は名乗った。ディックスの幼馴染だとも。その割には、アグレイシア軍の兵服を着ていて、どうにも胡散臭い。
「信じなくてもいい。でも、今は目的を同じにする同志だと思って」
無表情で言い切るのも怪しい。だが、マオの子供ながらの勘は、嫌悪感で突き放すのは悪手だと告げていた。
「おそらく、ジュメールは禁忌を犯した。LINKSの介入を恐れ、始祖種ヴァーンだけを殲滅するウィルスを、『鋼鉄の獣』に搭載していた」
淡々と語るティナの話が全部わかるわけではない。ただ、子供の自分にもわかる。ジュメールが、三国一の悪党だと。
02/09-翻弄
ティナと共にゆく道は、戦争に翻弄されたひとびとの絶望の残骸だった。建物の陰にもたれかかったまま息絶えている軍人。明日の食料に餓えた老人。親を求めて泣いている、自分より幼い子供。
「ジュメールは敵じゃないの?」
彼らに目もくれずすたすたと進むティナとの沈黙に耐えかねて訊ねれば、彼女は淡々と返してくる。
「たしかに、戦に敵と味方はある。だけど善悪は無い。誰もが我が国が正義だと言い張り、誰もが己の悪行から目を逸らす」
少年を見下ろすティナの表情は、やはり冷たいままだ。
「あなたはこちら側に来てはいけない。撃たずに、ただ公正に、事実を見ていて」
02/10-瓦礫
瓦礫の山を漁っている少女がいた。服は薄汚れて、むき出しの腕や足はあちこちが傷ついている。埋もれそうなほどに体を突っ込んで、何かを探している。
「……何やってんだよ」
マオは見過ごせず声をかける。少女はびくりと身をすくませ、のそのそと這い出てきた。
「ママの」
つぶらな目を潤ませる。
「ママの形見のペンダントが、この中に」
見つかるはずが無い。潰されて、自分も瓦礫の一部になるのが関の山だ。そう告げようとした時、ティナが瓦礫の前に膝をついて、手を触れる。そこから鉄屑の山が凍りついて砕け、きらきら光るトパーズのペンダントが残った。畳む
#アルファズル戦記
#灰になるまで君を呼ぶ